WAONCD-140
(2010年3月1日発売) Open Price

録音日:2008年9月5日〜7日
場所:神奈川県立相模湖交流センター

Producer, Engineer, Edit:小伏和宏
Assistant Director:土居瑞穂/廣海史帆



《DSD recording》
Microphone:Earthworks QTC-1mp
Method:Stereo A-B
Pre-amp:Grace Design model 201
Recorder:TASCAM DV-RA1000
Clock:Rosendahl nanosyncs
Monitor : Waon Recording Monitor

《96kHz 24bit PCM editing》
DAW:Waon DAW mk III
DDC:dcs974
Monitor : Waon Reference Monitor



Cover design, Art work:才村昌子
http://www.saimura-masako.com/

■Profile
上尾直毅(フォルテピアノ)
東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を1991年に卒業後、チェンバロを本格的に学び始める。在学時ピアノを辛島輝治氏、チェンバロを山田貢、鈴木雅明、渡邊順生の各氏に師事する。1992年第6回古楽コンクールで「通奏低音賞」を受賞する。同年よりアムステルダム・スウェーリンク音楽院にてチェンバロをG・レオンハルト、A・アウテンボッシュの両氏に師事し95年ソリストディプロマを得て卒業。続いてデン・ハーグ王立音楽院にてフォルテピアノをS・ホーホランド氏に師事し1998年にソリストディプロマを得て卒業。同年P・ヘレヴェーヘ指揮、デン・ハーグ王立音楽院の古楽オーケストラとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を共演し、たまたま居合わせたルーマニア出身の現代作曲家で古典音楽にも造詣の深いジェルジ・クルターク氏に絶賛される。1999年よりデン・ハーグ王立音楽院古楽器科の正式伴奏員を勤め、2000年から帰国する2001年まではオランダ室内管弦楽団のチェンバロ奏者も勤める。すぐれた鍵盤楽器奏者であるにとどまらず、バロック時代の宮廷バグパイプ「ミュゼット」を独自に研究し習得、その他、打楽器やバロックギターも演奏するなど、その活動は多岐にわたる。そのレパートリーは、バロック音楽はいうまでもなく、中世ルネサンスから古典派ロマン派音楽まで、驚嘆すべき広範囲にわたっており、自らの感性と音楽史的観点とを融合させた独自の世界を展開させている。

荒木優子(ヴァイオリン)
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。同大学研究科修了。ヴァイオリンを辰巳明子氏、バロック・ヴァイオリンを若松夏美氏に師事する。モダンヴァイオリン奏者としてのみならず、バロック及びクラシカル・ヴァイオリンの演奏家としても非常に高く評価されており、「バッハ・コレギウム・ジャパン」をはじめ国内の様々な古楽オーケストラやアンサンブルの主要メンバーとして、数多くの演奏会やCD録音に参加している。

Naoki Ueo (Fortepiano)
In 1987, he was accepted at Tokyo National University of Fine Arts and Music where he studied piano with Teruji Karashima for four years, graduating in 1991. Naoki also began studying the harpsichord with Mitsugu Yamada, Masaaki Suzuki and Yoshio Watanabe. In 1991 he was awarded the prize for "Best Basso Continuo Player" at the International Early Music Competition held in Yamashina, Japan. In 1992, Naoki went to the Netherlands and continued his harpsichord studies with Gustav Leonhardt and Annecke Uittenbosch at the Sweelinck Conservatory in Amsterdam. In 1995 he graduated with "Uitvoerend musicus" (Soloists Diploma). From 1995, Naoki studied fortepiano with Stanley Hoogland at The Royal Conservatory in The Hague, and in 1997 he performed Beethoven's 3rd piano concerto op. 37 with the orchestra of the Royal Conservatory in The Hague, conducted by Philippe Hereweghe. This performance was highly praised by Romanian composer Gyorgy Kurtag. He completed his "Uitvoerend Musicus" for fortepiano in 1998. From 2000 until return to Japan in 2001 he played as a member of The Netherlands Chamber Orchestra (harpsichord). Mr. Ueo is not only a historical keyboard player but also known as a performer of the "musette de cour" (French court bagpipe in the 18th century), renaissance bagpipes and the baroque guitar.

Yuko Araki (Violin)
After graduating from Toho Gakuen High School, she was accepted at Toho Gakuen School of music where she studied modern violin with Akiko Tatsumi and baroque violin with Natsumi Wakamatsu. She earned a good reputation not only as a modern violinist, but also as a baroque and classical performer. She plays as a main member of various baroque orchestras and ensembles in Japan such as "Bach Collegium Japan", "Orchestra Libera Classica" or "Trovatori Levanti".

Photo by Kazuhiro Kobushi (LeicaR8, Leica Summilux-R 50mm/f1.4 II)


■録音のこだわり
今回は、演奏者の上尾直毅さんが、「オランダバロックの愉悦」(WAONCD-041)の収録の時に使ったEarthworks QTC-1というマイクの音がお気に入りで、これで録りたいということでしたので、このマイクのマッチングペア2本で収録しました。やや自己雑音が多いマイクなので、曲間で少し「サー」というノイズが聞こえるところもありますが、それ以上に、フォルテピアノを演奏する上での繊細なタッチのちがいや、ヴァイオリンの豊かな倍音がきれいに収録されていることを良しとするべきでしょう。マイクプリには、このマイクに良くマッチングするGrace Design社のものから、特に繊細な音を出すmodel 201を使用しています。
写真を見ていただくと、少し奇妙に思われるかもしれません。やたら真っ暗なうえに(写真はこれでもずいぶん明るめにしてあります)、舞台ではなく客席に楽器を置いてありますね。マイクは舞台の上に乗っています。もちろん全てに意味があります。フォルテピアノは、周囲の温度や湿度の変化に敏感にピッチやタッチがくるってしまいます。かといって暗騒音のもとになりますから、収録中は空調はつけることができません。そこで朝一番にホールの方に空調を入れておいていただいて、温湿度が落ち着いたところで空調を止め、温度が上がらないようにホール内の全ての明かりを落とします。後は手もと灯ひとつで調律から演奏まで頑張ってもらうということになりました。一方フォルテピアノですが、弦を「たたく」という特性上、やはりその反作用で、楽器の足が床をたたくのですね。黒檀の薄い板や5円玉を楽器の足の下に挟んで、全ての足が均等な圧力で接地してガタつかないようにしているのですが、やはり床に結構な振動が伝わります。下が空洞の舞台だと、まるで太鼓をたたいているようなものです。録音には余計な低音が入ってきてしまいますから、舞台の上での収録は難しいです。幸い相模湖交流センターの客席は、簡単に椅子が撤去できるうえに、ダンスにも対応できるようとても頑丈な床になっています。そこで、楽器は客席側に、マイクは床の振動が伝わらないように、床面とはつながっていない舞台(可動舞台で床とは分断されている)に置いたというわけです。さらに、上尾直毅さんからは、「ホールの響きではなく、大きな部屋のような響きで録って欲しい」とのご注文でしたので、そういう響きのするポイントに楽器とマイクをセッティングしています。念のため付け加えますと、あとから電気的な残響を加えたり、音質を調整したりなどということはいっさいしていません。あくまでもセッティングだけで要求された響きを録っています。うまくいっているかどうかはぜひCDをお聴き下さい。

Photo by Kazuhiro Kobushi (Canon PowerShot G7)