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WAON RECORDS



詳細情報

ジャケットイメージ

ベートーヴェン 61鍵の時代

上尾直毅(フォルテピアノ) 荒木優子(ヴァイオリン)

WAONCD-120 / 72min Stereo / CD 2010年3月1日発売 オープンプライス JAN/EAN 4560205956121
解説:上尾直毅(日本語、英語)
レコード芸術誌〈特選盤・優秀録音〉 音楽現代誌〈準推薦〉 

ベートーヴェンが31歳になるまでに書いた20曲のピアノソナタは、音域が5オクターブ(61鍵)のフォルテピアノを駆使して書かれたものです。繊細なウイーン式アクションを備えたその楽器は、彼の創作を多いに手助けしました。このCDにはその時期の一番最初と最後にあたる作品が収められています。わずか7,8年の間にベートーヴェンの音楽が大きく変化したこと、彼がフォルテピアノにいかに大きな可能性を見いだしていたかを感じ取っていただけるでしょう。


[収録曲目]

1-4.ヴァイオリンソナタ 第5番 へ長調 作品24「春」(1801)
5-8.ピアノソナタ 第1番 へ短調 作品2-1(1795)
9-12.ピアノソナタ 第18番 変ホ長調 作品31-3(1801/02)

[演奏者プロフィール]

上尾直毅 うえお なおき
東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻を1991年に卒業後、チェンバロを本格的に学び始める。在学時ピアノを辛島輝治氏、チェンバロを山田貢、鈴木雅明、渡邊順生の各氏に師事する。1992年第6回古楽コンクールで「通奏低音賞」を受賞する。同年よりアムステルダム・スウェーリンク音楽院にてチェンバロをG・レオンハルト、A・アウテンボッシュの両氏に師事し95年ソリストディプロマを得て卒業。続いてデン・ハーグ王立音楽院にてフォルテピアノをS・ホーホランド氏に師事し1998年にソリストディプロマを得て卒業。同年P・ヘレヴェーヘ指揮、デン・ハーグ王立音楽院の古楽オーケストラとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を共演し、たまたま居合わせたルーマニア出身の現代作曲家で古典音楽にも造詣の深いジェルジ・クルターク氏に絶賛される。1999年よりデン・ハーグ王立音楽院古楽器科の正式伴奏員を勤め、2000年から帰国する2001年まではオランダ室内管弦楽団のチェンバロ奏者も勤める。すぐれた鍵盤楽器奏者であるにとどまらず、バロック時代の宮廷バグパイプ「ミュゼット」を独自に研究し習得、その他、打楽器やバロックギターも演奏するなど、その活動は多岐にわたる。そのレパートリーは、バロック音楽はいうまでもなく、中世ルネサンスから古典派ロマン派音楽まで、驚嘆すべき広範囲にわたっており、自らの感性と音楽史的観点とを融合させた独自の世界を展開させている。

荒木優子 あらき ゆうこ
桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学音楽学部を卒業。同大学研究科修了。ヴァイオリンを辰巳明子氏、バロック・ヴァイオリンを若松夏美氏に師事する。モダンヴァイオリン奏者としてのみならず、バロック及びクラシカル・ヴァイオリンの演奏家としても非常に高く評価されており、「バッハ・コレギウム・ジャパン」をはじめ国内の様々な古楽オーケストラやアンサンブルの主要メンバーとして、数多くの演奏会やCD録音に参加している。


[使用楽器]

Fortepiano : Toshiya Nogami Japan 2005 after A.Walter (Vienna, ca.1795)
Violin : Giovanni Baptista Grancino / Bow : Kees van Hermert (Den Haag, 2007)


[Recording Data]

録音日時・場所
2008年9月5日~7日 神奈川県立相模湖交流センター
[ 2.8224MHz DSD Recording & 96kHz 24bit Editing ]
使用マイク(ステレオペア)
Earthworks QTC-1mp
セッティング
Pair microphones A-B stereo
プリアンプ
Grace Design model 201
レコーダー
TASCAM DV-RA1000
マスタークロック
Rosendahl nanosyncs
DSD to PCM converter
DCS 974
  • Excutive Producer, Recording & Editing : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
  • Fortepiano regulation : Toshiya Nogami 野神俊哉
  • Assistant Director : Mizuho Doi 土居瑞穂 / Shiho Hiromi 廣海史帆
  • Translation : Howdy Language School
  • Cover design & Art works : Masako Saimura 才村昌子〈オフィシャルサイト〉

[録音のこだわり]

今回は、演奏者の上尾直毅さんが、「オランダバロックの愉悦」(WAONCD-041)の収録の時に使ったEarthworks QTC-1というマイクの音がお気に入りで、これで録りたいということでしたので、このマイクのマッチングペア2本で収録しました。やや自己雑音が多いマイクなので、曲間で少し「サー」というノイズが聞こえるところもありますが、それ以上に、フォルテピアノを演奏する上での繊細なタッチのちがいや、ヴァイオリンの豊かな倍音がきれいに収録されていることを良しとするべきでしょう。マイクプリには、このマイクに良くマッチングするGrace Design社のものから、特に繊細な音を出すmodel 201を使用しています。
写真を見ていただくと、少し奇妙に思われるかもしれません。やたら真っ暗なうえに(写真はこれでもずいぶん明るめにしてあります)、舞台ではなく客席に楽器を置いてありますね。マイクは舞台の上に乗っています。もちろん全てに意味があります。フォルテピアノは、周囲の温度や湿度の変化に敏感にピッチやタッチがくるってしまいます。かといって暗騒音のもとになりますから、収録中は空調はつけることができません。そこで朝一番にホールの方に空調を入れておいていただいて、温湿度が落ち着いたところで空調を止め、温度が上がらないようにホール内の全ての明かりを落とします。後は手もと灯ひとつで調律から演奏まで頑張ってもらうということになりました。一方フォルテピアノですが、弦を「たたく」という特性上、やはりその反作用で、楽器の足が床をたたくのですね。黒檀の薄い板や5円玉を楽器の足の下に挟んで、全ての足が均等な圧力で接地してガタつかないようにしているのですが、やはり床に結構な振動が伝わります。下が空洞の舞台だと、まるで太鼓をたたいているようなものです。録音には余計な低音が入ってきてしまいますから、舞台の上での収録は難しいです。幸い相模湖交流センターの客席は、簡単に椅子が撤去できるうえに、ダンスにも対応できるようとても頑丈な床になっています。そこで、楽器は客席側に、マイクは床の振動が伝わらないように、床面とはつながっていない舞台(可動舞台で床とは分断されている)に置いたというわけです。さらに、上尾直毅さんからは、「ホールの響きではなく、大きな部屋のような響きで録って欲しい」とのご注文でしたので、そういう響きのするポイントに楽器とマイクをセッティングしています。念のため付け加えますと、あとから電気的な残響を加えたり、音質を調整したりなどということはいっさいしていません。あくまでもセッティングだけで要求された響きを録っています。うまくいっているかどうか、ぜひお聴きになってっみて下さい。