詳細情報
皇帝のビウェラ・市民のリュート
ナルヴァエスとノイジードラー
櫻田 亨(ビウェラ/6コース・リュート)
WAONCD-130 / 61min Stereo / CD 2010年7月26日発売 オープンプライス JAN/EAN 4560205956138
解説:佐藤豊彦(日本語、英語)
レコード芸術誌〈準特選〉
ビウェラ音楽は「楽器の収集家で、音楽愛好家であったカール5世と共に生まれ、共に消えた」といっても大げさではなく、中音域が最も良く鳴り、高音と低音は弱い特性を持ち、対位法の音楽に適しています。一方同時代の6コースリュートは細かくて速いパッセージや、舞曲のリズム作りには好都合です。どちらの楽器も歴史的なガット弦によって演奏されるています。2つの楽器の違いがはっきりと聴き分けていただけるでしょう。
Apple music / iTunesでのアルバム購入時付属のデジタルブクレットは、CDに添付されるブックレットと一部内容が異なります(解説一部省略)
[収録曲目]
- ナルバエス (?~?)
- 「クラロス伯爵」による変奏曲
- 「ファンタジア」第2巻 第2番
- 「ファンタジア」第2巻 第6番
- リシャフォーの「我、無気力に塞ぎ込む」
- 「ファンタジア」第1巻 第2番
- 「低音上の対位法」
- 「ファンタジア」第2巻 第4番
- 「牛を見張れ」による変奏曲
- 「ファンタジア」第2巻 第3番
- 「皇帝の歌」(ジョスカン(?)の「千々の悲嘆(かなしみ)」
- ノイジードラー (1508~1563)
- ジョスカン(?)の「千々の悲嘆(かなしみ)」
- オルガン風プレアンベル(プレリュード)
- ホフハイマーの「あなたの意のままに」
- ラピチーダの「タンネルナックにて」
- ジョスカンの「さらば恋人よ」
- 「素敵なイタリア舞曲」
- イサークの「泉流れて」
- イサークの「異教の女」
- 掻き鳴らし奏法による宮廷舞曲
[演奏者プロフィール]
櫻田 亨 さくらだ とおる
日本ギター専門学校でギターを学んだ後、オランダのデン・ハーグ王立音楽院でリュートを佐藤豊彦に師事した。リュート、テオルボ、 ビウエラ、バロックギター、19世紀ギターといった撥弦楽器を幅広く演奏し、時代やその音楽にふさわしい楽器を的確に使い分けている。また、すべての楽器にガット弦を用いて歴史的な表現力を引き出す演奏スタイルは、世界でもまだ数少なく、非常に興味深いものである。ソリストとしてのみならず、通奏低音奏者として、共演者の意図を十分に汲み取って盛り立てる柔軟な音楽性は、多くの演奏家から信頼を集めている。「ルストホッファース」「ムジカ エランテ」メンバー。リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン事務局長。リュートソロCDに「やすらぎのガット 7つの響き」WAONCD-060がある。
[使用楽器]
Vihuela by Martin de Witte, 2007
(Den Haag The Netherlands)
6‐course Lute by Martin de Witte, 2007
(Den Haag The Netherlands)
[Recording Data]
- 録音日時・場所
- 2008年10月28日~30日(リュート)/ 2009年11月11日~12日(ビウェラ)
西海市大島文化ホール(長崎県)
- [ 2.8224MHz DSD Recording & 96kHz 24bit Editing ]
- 使用マイク(ステレオペア)
- MBHO MBP604/KA1100K with Schneider disc (MBHO made)
- セッティング
- OSS (Buffled stereo)
- プリアンプ
- Grace Design model 201
- ラインアンプ
- Grace Design Lunatec V3
- レコーダー
- TASCAM DV-RA1000
- DSD to PCM converter
- DCS 974
- Excutive Producer, Recording & Editing : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
- Coproducer & Recording Director : Toyohiko Satoh 佐藤豊彦
- Cover design & Art works : Masako Saimura 才村昌子〈オフィシャルサイト〉
- Photograph : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
[録音のこだわり]
2008年にリュートもビウェラも両方収録して、編集を進めている最中、櫻田さんから「奏法が変化してより良く楽器を歌わせられるようになってきたのでビウェラだけ再収録したい」との話。最初の収録から13ヶ月後にビウェラだけを再収録しました。通常このようなことになると、最初の収録と2回目の収録で音色が変わってしまって、CDの中で不自然なことになってしまいやすいのです。でも、幸か不幸かこの録音、ものすごくセッティングに苦労したせいで、しっかりセッティング記録が残してあり、すっかり元通りのセッティングを再現できたので、13ヶ月経った後でも前回同様の音色がすぐに得られたのです。
何が苦労したって言って、何せ楽器の音が小さいのです。全弦ガット弦なので、ピークの音圧はそこそこあるのですが、平均音圧がぐっと小さい。音がホールの反響板まで届かないからホールが鳴らない。野原で弾いているギターを録音しているようなもの。以前他社レーベルからのご依頼で19世紀ギターを収録したときにも同じ問題があって、その時は反響板の2メートルほど手前で反響板の方に向って演奏してもらい、反響板から跳ね返ってきた音を収録したということがありました。しかし今回はその時よりさらに音量が小さい...。弾き頭のピークは立っているし、楽器自体にも多少響きがあるので、せめて初期反射さえ作り出せれば、音が回って多少なりともホールも鳴ってくれるだろうということで考え出したのが、写真にある移動式反響板! ホールの受付から持ってきた折りたたみ机です(笑)。櫻田さんには客席へおりてもらって、舞台のせり上がりとこの折りたたみ机で反響板とし、さらにすぐ前の客席には大きなビニールシートを広げて反射面を作りました。たかがこれだけのことなのですが、ちゃんとホールに音が回るようになりました。CDを聴いていただければちゃんとホールトーンがしています。決して電気的な残響を加えたのではありません。全部ナマです。
マイクセッティングの方は、櫻田さんの先のアルバム「やすらぎのガット 7つの響き」(WAONCD-060)の時にもとても良い結果になった、OSS(Optimal Stereo Signal)法を再び採用しました。マイクを近くにセッティングしても、スピーカーの間に巨大な楽器が出現することなく、適切なサイズの音像が再現できるからです。マイクカプセルには、より繊細な音が捉えられるラージダイアフラムのKA1100Kを使いました。結果は上々。二つの楽器の違いを良く聞き取っていただけるのではないでしょうか。ただ、音の小ささに対応して、マイクアンプをタンデムドライブしているので、どうしても「サー」というノイズが入ってしまっています。原音を損なわないようにあえてこのノイズは除去せずに残してあります。これがあまり気にならないくらいの音量で再生していただくと、本来の楽器の音量感に近くなると思います。珍しい楽器で聴く珍しい曲。深く研究された櫻田さんの演奏をお楽しみ下さい。
それにしても西海市で食べた魚はおいしかったなぁ~。2回行けてラッキー!