詳細情報
無伴奏リコーダー600年の旅
本村睦幸(リコーダー)
WAONCD-140 / 72min Stereo / CD 2009年6月8日発売 オープンプライス JAN/EAN 4560205956145
解説:本村睦幸(日本語、英語)
レコード芸術誌〈準推薦〉 音楽現代誌〈推薦〉
CDジャーナル誌〈イチ押し〉榊順一氏選
リコーダーは長い歴史を持つ楽器で、初期の楽器は13世紀以前にすでに存在していました。このCDは、14世紀から20世紀までの600年におよぶ、無伴奏リコーダーの広大なレパートリーを巡る旅です。中世、ルネサンス、初期バロック、後期バロック、モダンの各種タイプのリコーダー10本を駆使して、千変万化のリコーダーソロ世界がすべて凝縮された必聴の1枚です。
[収録曲目]
- ヤコプ・ファン・エイク
- 期待に胸躍るフィリス
- 〈デイヴィジョンフルート第2巻〉より
- ペープシュ氏のプレリュード
- モーガン氏のシャコンヌ
- ヒルズ氏のディヴィジョン
- ギヨーム・ド・マショー
- 私はその花を愛する
- アウレリオ・ヴィルジリアーノ
- バッターリャによるリチェルカータ
- ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ
- Prélude Lentement
- Allemande Modérément
- Ramage Doucement - Gaiment
- Menuet
- ローラント・モーザー
- 曼荼羅華
- エルネスト・クレーメル
- ディヴェルティメント作品4の3
- 篠原眞
- Fragmente〈断片〉
- ジョヴァンニ・バッサーノ
- リチェルカータ第3番
- ヨハン・ゼバスティァン・バッハ
- Allemande
- Courante
- Sarabande
- Bourée Anglaise
- 作者不詳
- トリスタンの嘆き
- 組曲作品35の6
- パルティータ
[演奏者プロフィール]
本村睦幸(もとむら むつゆき)は、アムステルダム・スウェーリンク音楽院でワルター・ファン・ハウエに現代音楽と古楽の双方を学び、卒業後はさらにジャネット・ファン・ウィンガーデンに師事した。長くにわたってヨーロッパで活躍した後に帰国した名手である。まさに天上から聴こえてくるような透明感あふれる音色と言葉を語るような微妙なニュアンスを表現できるというリコーダーの特質を存分に生かした演奏により、大曲のみならず何気ない小品に至るまで、それぞれの作品の魅力を引き出す手腕は特筆に値する。現在は、バロックアンサンブル〈ルストホッファース〉やリコーダーコンソート〈SWEET FLUTES〉の活動のほか、リコーダーのレパートリーを網羅的に取り上げるリサイタルシリーズが注目を集めている。
〈オフィシャルサイト〉
[使用楽器]
- f'管中世リコーダー(a'=440):斉藤文誉(アムステルダム1992)
- c'管シュニッツァーリコーダー(a'=466):ピーター・ファン・デア・プル(ブニク 2007)
- g'管ガナッシリコーダー(a'=466):斉藤文誉(アムステルダム1989)
- g'管ガナッシリコーダー(a'=440):斉藤文誉(アムステルダム2004)
- c''管初期バロックリコーダー(a'=460):斉藤文誉(アムステルダム2008)
- f'管ブレッサンモデル後期バロックリコーダー(a'=415):斉藤文誉(アムステルダム1991)
- f'管ステインズビージュニアモデル後期バロックリコーダー(a'=415):斉藤文誉(アムステルダム1988)
- d'管ヴォイスフルート(a'=415):斉藤文誉(アムステルダム1993)
- c''管ソプラノリコーダー(a'=440):鈴木楽器/徳永隆二(浜松2008)
- c'管テナーリコーダー(a'=440):竹山木管楽器製作所(大阪2008)
[Recording Data]
- 録音日時・場所
- 2008年7月23日~25日 神奈川県立相模湖交流センター
- [ 2.8224MHz DSD Recording & 96kHz 24bit Editing ]
- 使用マイク(マルチマイク)
- Neumann M147tube (Center)
- MBHO MBP604/KA300NB (L-R)
- Microtech Gefell M300 (SL-SR)
- セッティング
- Spaced cardioid + NOS to Stereo-mix
- プリアンプ
- Grace Design Lunatec V3 (Center)
- Millennia Media HV-3C type I (L-R)
- Grace Design model 201 (SL-SR)
- オーディオミキサー
- Current CSP162
- レコーダー
- TASCAM DV-RA1000
- マスタークロック
- Rosendahl nanosyncs
- DSD to PCM converter
- DCS 974
- Excutive Producer, Recording & Editing : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
- Assistant Director : Naoki Ueo 上尾直毅/Tomoko Teramura 寺村朋子/Yuki Horiuchi 堀内由紀
- Translation : Mutsuyuki Motomura 本村睦幸/Howdy Language School
- Cover design & Art works : Masako Saimura 才村昌子〈オフィシャルサイト〉
- Photograph : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
[録音のこだわり]
バルサンティのリコーダーソナタの録音(WAONCD-080)では、アンサンブルの音場感を大切にするために2本のマイクで録りました。今回はリコーダーたった1本ですが、写真のような5本のマイクを使ったセッティングを採用しました。これはある種日本の音楽ホールで録る場合の特殊事情と言えるかもしれません。本村さんは比較的体を動かさずに演奏されますが、ヨーロッパに比べ残響の薄い日本のホールで2本のマイクで録ると、演奏中に身体が動くのが感じられて、聴いていて気になってしまいます。それに、ソロ・リコーダーに必要なだけのホール残響を取り込む為には(残響が薄いので)音源から距離をとらねばならず、旋律線がやや不明瞭になります。相模湖交流センターのホールはきれいな残響を持ってはいますが、今回のような状況では十分とは言えません。そこでこれらを解決するためにこのセッティングとなりました。一般的にはサラウンド録音に使うセッティングです。フロントは3本の単一指向性マイクを用いたSpaced Cardioidと呼ばれるセッティングです。中央に真空管式のノイマンM147を使って主にこれで直接音を狙っています。ヴォーカル用に使われるマイクですが、管楽器には良いマッチングです。その両サイドにMBHOの広単一指向性(ワイドカーディオイド)のKA300NBカプセルを付けたMBP604を配して前方の音場を形成しています。ホール残響を狙った後ろ向きのマイクは、これまた木管楽器と相性の良いMicrotech Gefellの単一指向性マイクM300をNOSと呼ばれるセッティングにして、このホールの最も美しい残響の響く客席後方上部を狙ってやや上向きにしています。これでセンター定位を安定させながら明瞭な旋律線とたっぷりのホールトーンを取りこめました。ワオンレーベルとしては初めてのマルチマイク録音です。ミキサーにはカレント社のCSP162というチャンネル毎の音量調整すらない超シンプル構成のものを使って、色付けの無い音でステレオミックスしています。ワンポイント録音と変わらない素直な音場感が形成できています。そのうちサラウンド盤が出るのかなぁと期待されている方には申し訳ありませんが、サラウンド用には96kHz,24bitの機材しか持っていないので、DSDで録っておきたいということからいきなりステレオミックスして収録していますので、サラウンド音源は存在しません。悪しからず。10本のリコーダーを使って演奏されていますが、楽器毎の音量差はとても幅広く、CDフォーマットにはちょっと収まりきらないほどです。いつもはCD全編通して音量一定にして収録しているのですが、今回は、音の小さいものは少し音量を上げ、音の大きいものはピークまで収まるように音量を絞って録音し、CDに収める際に大音量部分だけやや深めのリミッターを使って音量をもどして全体をそろえています。リミッターにはマスタリングに使っているMetric Halo Mobile I/O 2d expandedに搭載されているMIO-Limitを使っています。DSPの処理が速いせいか素直な音色で、使っていることはあまり気にならないと思います。ということで、平均音量の小さなCDですが、うっかりボリュームを上げているとトラック13の6分位のところでドッカーンと大きな音が来ますのでご注意下さい。メジャーレーベルだったら発売をためらうほどの尋常じゃない倍音成分が2秒ほど続きますので、繊細なツイーターのシステムをお使いの方は、ちょっと控えめの音量で試してみてからお楽しみ下さい。ちなみにこの部分の収録時、モニタールームでは大音響が響いているのに、本村さんは涼しい顔して演奏してると思ったら、なんと耳栓をして演奏していました^^;)
ところで、トラック5はじめ、いくつかのトラックのノイズが大きいという苦情を頂きました。中世リコーダーのトラックですね。中世リコーダーは皆さんご存知の現代のリコーダーに比べると音量が2〜3割程度しかありません。つまりとっても音が小さいのです。おそらくノイズが気になる方は、本来の楽器よりかなり大きな音量で再生されたのだろうと思います。バックの「サー」というノイズが気にならないくらいが本来の楽器の音量ですので、あまり音量を上げずにお楽しみ下さい。このような「サー」というノイズは、最近は編集機上のソフトウエアで取り除くこともできるのですが、どうしても微妙な空気感に影響を与えてしまいますので、弊社では原音を大切にするという観点から、あえて除去をしていません。ぜひ、何も足さない、何も引かない音をお楽しみになってみて下さい。きっとすてきな音楽と出会っていただけると思います。