詳細情報
愛の詩 ~ペトラルカの面影に POESIA AMOROSA
アンサンブル・ポエジア・アモローザ
高橋美千子(ソプラノ) 上野訓子(コルネット)
頼田 麗(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 佐藤亜紀子(テオルボ)
WAONCD-610 / 58min Stereo / CD(HQCD) 2025年9月8日発売 オープンプライス JAN/EAN 4560205956619
WAONCD-610 / 〜Hi-Res 2025年9月5日配信開始 JAN/EAN 4560205956619
Apple Music / iTunes 2025年9月5日配信開始 / Naxos Music Library Japan 2025年9月19日配信開始
WAONCD-610G(海外版) / 〜Hi-Res 2025年9月5日配信開始 JAN/EAN 4560205958521
※配信サービスの料金は、各配信サービスのサイトでご案内をご確認下さい。
解説:佐々木なおみ(日本語、英語)
「音楽が生まれる」とは、詩が感情をかたち作り、そのエネルギーが音楽を導く、16・17世紀イタリア音楽の表現において重要な要素。詩と音楽に計り知れない愛と情熱をかけて演奏活動をする〈アンサンブル・ポエジア・アモローザ〉。各地で深い感動を呼び起こし、高い評価を得た演奏を、カスタムメイド電流伝送マイクとDSDによる高音質録音でお楽しみください。
[収録曲目]
- 「西風が戻り」 クラウディオ・モンテヴェルディ / オッターヴィオ・リヌッチーニ
- シンフォニア「 美しき乙女よ」 原曲:マルコ・ダ・ガリアーノ 編曲:上野訓子 *
- 「汝ら、詩に散りぬる音をば」 シジスモンド・ディンディア / フランチェスコ・ペトラルカ
- ルッジェーロ主題によるソナタ サラモーネ・ロッシ *
- 「天空のいずこにて」 ヤコポ・ペーリ / フランチェスコ・ペトラルカ
- ディミニューション「麗しいアマリッリ」 ジューリオ・カッチーニ *
- 「麗しいアマリッリ」 ジューリオ・カッチーニ / アレッサンドロ・グアリーニ
- ディミニューション「若き天使 巧みなるその羽で」 ルカ・マレンツィオ / フランチェスコ・ペトラルカ *
- 「美しき乙女よ」 マルコ・ダ・ガリアーノ / フランチェスコ・ペトラルカ
- ディミニューション 「ひがな一日うち泣きて」 チプリアーノ・デ・ローレ *
- 「ひがな一日うち泣きて」 ジューリオ・ カッチーニ / フランチェスコ・ペトラルカ
- 「天にこれほどの光はなく」 ジューリオ・カッチーニ / オッターヴィオ・リヌッチーニ
- クロリンダのヴォルタ マルティーノ・ぺゼンティ *
- 「友よ、おまえの勝ちだ」 シジスモンド・ディンディア / トルクァート・タッソ
- ディミニューション 「ああ、日一つ また一つ」 チプリアーノ・デ・ローレ / フランチェスコ・ペトラルカ *
- ニンファの嘆き クラウディオ・モンテヴェルディ / オッターヴィオ・リヌッチーニ
- パッサカリア ジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガー *
*は器楽曲
[演奏者プロフィール]
アンサンブル・ポエジア・アモローザ Ensemble Poesia Amorosa
2023年に17世紀イタリアの詩をテーマにしたコンサート「ポエジア・アモローザ」を京都と東京で開催した。その公演は大変好評を博したので、その公演名をとアンサンブルの名前とし、今後の活動をしていくことになった。コルネットとソプラノが織り成すしなやかな2重奏とヴィオラ・ダ・ガンバとテオルボの表現力溢れた通奏低音の対話、コンサートを通して一つの大きな作品を体験できるようなプログラム構成がこのアンサンブルの魅力である。
2025年5月には京都、東京で17世紀の宗教的な歌でマリアをテーマとした「Piangete occhi 瞳よ 涙を流せ」を開催し大成功を収めた。今回が初のソロアルバムとなる。
Snapshot : Kazuhiro Kobushi
高橋美千子 たかはしみちこ ソプラノ
パリを拠点に古楽及び現代音楽を中心に活動。東京芸大声楽科ソプラノ専攻卒。古楽歌手アニェス・メロンに才能を見出され、2009年より渡仏、パリ高等音楽院にてバロック声楽をH.クルック、I.プルナール、バロックジェスチャーをS.ブーラン、イタリア初期バロックをJ.チュベリ、S.デルマ、ルネサンス音楽をA.モレットらに師事。かつて《アンサンブル・プラネタ》で得た和声感覚とアカペラ技術、また卓越した表現力と演技力により、バンジャマン・ラザール(演出家)、オレリアン・デュモン(作曲家)など著名な芸術家から信頼を受け、オペラ・コミック座や各地の歌劇場、アンブロネFestival de musique Baroque d’Ambronay等の古楽音楽祭に出演。これまでLes Cris de Paris、Stradivaria、Le Parlement de Musique、Le Balcon 等と共演。『Melancholia』『Passions』のCDでDiapason d’orを受賞。人との関わりから生み出される声の芸術を愛してやまない。
上野訓子 うえのくにこ コルネット
大阪音楽短期大学器楽科卒業後、コルネットを濱田芳通、B.ディッキー、W.ドンゴワ、J.テュベリの各氏に師事。スイス・バーゼルスコラカントゥルムにて学んだ後、渡仏。パリ市高等音楽院古楽科にて、コルネット奏者として同音楽院では初のディプロマ取得者として満場一致で卒業。ヨーロッパの主要古楽アンサンブルのメンバーとして、各地のコンサートやオペラ、録音、テレビに出演。近年にはコンチェルト・イタリアーノ東京・神奈川公演、バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会、CD録音に参加。新国立劇場にて鈴木優人氏指揮、グリュック作曲オペラ「オルフェオ とエウリディーチェ」に出演。関西ではコルネット とサクバットによるアマチュアグループ「ヒストリカル・ウィンドアンサンブル」を立ち上げ指導を行うなど、活動を展開している。アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ メンバー。
頼田 麗 よりたれい ヴィオラ・ダ・ガンバ
相愛大学音楽学部卒業。チェロを日比野忠孝、斎藤建寛の各氏に師事。ヴィオラ・ダ・ガンバ及び室内楽を平尾雅子氏に師事。オーケストラや室内楽で演奏活動を行う傍ら、病院や養護施設などでの慰問演奏にも積極的に取り組む。桐朋学園大学に於いて記譜法と通奏低音を学ぶ。ロータリー財団の国際親善奨学生としてドイツへ留学。その後スイスのルガーノ・コンセルバトーリオにてV.ギエルミ氏に師事。バーゼル・スコラ・カントールムに入学、P.パンドルフォ氏のもとで研鑚を積み、ディプロム取得。在学中、J.サヴァール氏、A.ルーリー氏などのプロジェクトに参加、またW.クイケン氏のマスターコースを受講。ドイツにて第4回テレマンコンクール、室内楽部門ファイナリスト及び「ベーレンライター賞」を受賞。兵庫県知事グランプリ賞を受賞。アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ メンバー。相愛大学音楽学部非常勤講師。
佐藤亜紀子 さとうあきこ テオルボ
東京芸術大学音楽学部楽理科卒。ドイツ国立ケルン音楽大学でK.ユングヘーネル氏、スイスのバーゼル・スコラ・カントールムでH. スミス氏に師事。ソロ及び通奏低音奏者として数々
の音楽家と共演を重ねている。NHK のららら♪クラシック「戦国武将を癒した音色」(2019)にてリュートとビウエラのソロを演奏。パリ在住の歌手高橋美千子との古楽ユニット「たまひび」にてCD「たまひび」をリリース(2021)。ソロCD「ララバイ、イギリスルネサンス期のリュート音楽」(2014)、「アレサンドロ・ピッチニーニ リュートとキタローネのためのタブラチュア曲集」(2023)は朝日新聞のfor your collectionの推薦盤に選ばれた。アイゼナハ音楽院リュートクラス講師。
[使用楽器]
14-course theorbo by Jun Matsuo (2019 Fukuoka)
Cornetto by Damien Bardonnet (2019 Jalogny)
Viola da Gamba by Pierre Bohr (1995 Milano)
Photographs of musical instruments : Kazuhiro Kobushi
[Recording Data]
- 録音日時・場所
- 2024年1月24日〜26日 エブノ泉の森ホール(小)
- [ 5.6448MHz DSD Recording & 192kHz 24bit Editing ]
- 使用マイク(ステレオペア)
- PureT Records 電流伝送型マイクロホン Schoeps MK2S 無指向性カプセル
- 設計・製作 : 毛利忠晴(ピュアートレコーズ)2018年バージョン
- セッティング
- Pair microphones A-B stereo
- プリアンプ
- PureT Records PT-CMP01
- 設計・製作 : 毛利忠晴(ピュアートレコーズ)2016年バージョン
- ADコンバータ
- Mytek Digital Brooklyn ADC power fed thrugh A&R Lab FIX-CURRENT+CPMsp
- レコーダー
- TASCAM DA-3000
- マスタークロック
- Grimm Audio CC2
- AC電源コンディショナ
- Waon BIT-15 Balance Power Supply
- DSD to PCM converter
- Weiss Saracon-DSD
- Executive Producer, Recording & Editing : Kazuhiro Kobushi 小伏和宏
- Artistic Director : Yoshinori Maki 眞木喜規
- Cover Image : ChatGPT Prompt by Michiko Takahashi 高橋美千子
- Translation : Masaomi Yanagisawa 柳沢正臣
- Concert Photograph : Studio LASP
- Editorial Design : Masako Saimura 才村昌子
Snapshot : Kazuhiro Kobushi
[録音のこだわり]
歌と器楽が対等な背丈で対峙し、有機的に絡み、ある種の艶、薫、姿のようなものを紡ぎ出してくる大人なアンサンブルなのです。ぱっと聞いた派手さで魅了するのとは違って、いつの間にかズルズル惹き込まれていくような魅力を持っています。第1回の演奏会に佐藤亜紀子さんからお誘いいただき、聞かせていただいたときに本当に魅了されました。その後、上野訓子さんからご連絡いただき、アルバムを作る機会を頂けたことは誠に幸運。
とても繊細で深い表現をするソプラノ、高い演奏技術に裏打ちされた美しい大胆さを持つ管、撥弦、擦弦という4人の組み合わせ。この組み合わせがこのアンサンブルの特徴と魅力の一片を担っているのは確かですが、収録はなかなか骨の折れる組み合わせでもあります。
響きに広い空間を要求する歌とコルネット、しかも歌はとても繊細な囁きも持ち合わせている。一方で表現の明快さには広すぎない空間がほしい低音弦楽器。かといって近づきすぎるとガット弦から鋭い音が出てくる。空間と距離の関係が難しい。マルチマイクで録って人工的な響きを付加すれば簡単ですが、このアンサンブルの生み出す倍音の世界はそれでは録れません。
場所としては、高い天井、広い舞台、響きすぎない空間が必要だったので、関空の表玄関にある泉佐野市立文化会館の小ホール「エブノ泉の森」を選びました。
空間を丸ごと録りたいので、電流伝送マイクのペア一択ですが、空間が広いために響きがハイ落ちになりますので、やや強い高域補正のかかっているSchoeps MK2Sカプセルを装着しています。ソプラノの高橋さんは自分の眼前(顔前?)にマイクがないことに少なからず驚いていましたが、プレイバックを聞き、細かいニュアンスまで録れていることが確認できて納得いただけました。ただ、自分の声が聞き取りにくいという事で、マイクの横にコンパネを立てて、これで声の一部を反射させるようにしました(ポップスのように返しのモニタースピーカ置けないので)。コルネットはこれだけの空間でも正面向かれるとベルからの直接音がかなり目立ち、本来の響きを録りにくいですので、斜め横向きに立っていただきました(そもそも見た目にも、いかにも管出口と空間とのインピーダンス整合がよろしくない形をしていますよね)。低音弦のお二人は少し前に出ていただき、好きにブンブンやってもらいました。アルバム冒頭の90秒はこのお二人の独壇場。
録音機材の方はいつものセット。AD/DAコンバータの電源には今までもA&R Labの出川式モジュールを導入した直流電源を使って音質向上を図っていましたが、今回同じくA&R Labの新機軸FixCurrent+CPMアダプタをコンバータと直流電源との間に挿入しました。これは電源の強化に結構効果があって、コンバータの音質の密度感やエネルギー感の向上、音場の広さの拡大など、多くの点が改善されました。編集の際にも使用しています。
販売会社の閉業が重なるなどの影響もあって、リリースまで1年半以上もかかってしまいましたが、とても良い音で素晴らしい演奏を収めることができています。配信ではHi-resもお聞きいただけますが、たいていはCDでも十分な高音質でお楽しみいただけると思います。できるだけ倍音豊かで、空間表現に優れた再生システムでお聞きただけると、より楽しみが増えると思います。
Snapshot : Kazuhiro Kobushi